俺が高校の頃住んでた所に、わりかし有名な心霊スポットがあったのね。
土日とかはガキとかが集まって肝試しとかして偉い近所迷惑だった。
その心霊スポットは、狭い洋館風の廃屋で、昔一家惨殺事件が起きたとかで、2階の一番奥にある書斎に行くと、髪振り乱した子供に追いかけられるとか噂されてた。
実際はただの廃屋で事件とかは起きてなかったのだけど。
窓とか入り口とかは壊されまくって落書きとかもされてメチャメチャに荒らされてた。
夏休み、暇だった俺は友達数人とある作戦を実行した。
夕方くらいに食料とか持って廃屋の例の書斎に行って、夜肝試しに来る人たちを待ち伏せしてタイミング良く脅かしたりする作戦だ。
うまくいけば本当に幽霊が出るとか呪われるとか噂されて、あんまり人来なくなるんじゃないかって思ったんだ。
今思うとそんな噂が立てばますます人来るだろって感じだけど・・・。
で、友達3人と5時過ぎに書斎に向かった。
俺は腕を青く塗って、真っ暗な中肝試しをしにきた人の足首を掴んで驚かす役。
あとの友達はすすり泣くような声を出したりあとは忘れた。
段々夜も暗くなってきて、7時くらいになったらドキュソじゃないけど肝試しに来た集団が来るのを窓から確認した。
タイミング良く驚かしたらそいつらは凄い悲鳴を上げて逃げていった。
俺らは嬉しくなってその後も驚かしまくった。
本当は明け方まで居続けるつもりだった。
だけど、少し薄気味悪いとか、テレビ見たいとか意見が出て9時30分頃でラストにしようって事になった。
それでも随分な数の集団を驚かしたし、俺たちは満足だった。
9時を回った頃、廊下の方から足音が聞こえた。
よしよし、また来たぞ、って友達に合図をして驚かす準備をした。
でもおかしい。
廊下はボロいながらも絨毯が敷き詰めてあって足音はあまりしない筈だ。
古くなってるから「ギシィ」という音はするのだけど、「カツーン、カツーン」なんて音がするわけがない。
ハイヒールで無機質な床を歩いてるような、そんな音。
足音は段々近づいてくる。
そして、書斎のドアを開けた。
でも、懐中電灯の光が部屋を照らすことなく、部屋には静寂が籠もったままだ。
電気無しでこの部屋まで辿り着くなんて絶対無理だ。
俺たちは息を殺して部屋の様子を探った。
ドアには誰かが立っているような気もするが暗くて見えない。
怖い、もしかしたら人間じゃないかも知れない、と思ったそのとき、
「パパ?」
小さな子供の声がした。
俺らは全速力でその場を逃げまくった。