ラジオから感情のない女性

アパートは都心から離れるため、衣服や家電関係は車でないとなかなか行き難いものがあった。
ある日、仲の良い友人Aと、私の車で服を買いに行こうという話になった。

ところが、私の車のバッテリーが上がってしまっていた。
普段なら車のことは後にして電車で行こうと思うのだが、何故かバッテリーを充電しようと思った。
近場で且つ車持ちの友人に連絡を取ってみたところ、友人Bが「都心の駅まで送迎をしてくれるなら、車を貸してやんよ。迎えは深夜だけどwww」と言ってくれたので、内心「なら充電させてくれた方が」等と思いつつ、そこは承諾。

Aにこれまでの経緯を説明し、これから一緒にB宅へ向かう旨を話した。
もともと大らかな性格Aは快諾してくれた。

しかし、Aが「歩くのダルいからBをこっちに呼んで、充電してから行こうぜ」と言い出した。
私は「さっき快諾したやん!?」と思ったが、そもそもの原因は私なので、Bと掛け合ってみると、充電は嫌だが車を持ってくることは承諾してくれた。

この時点で、なんか違和感があった。

ほどなくして、Bの車が到着し、A、Bと駅へ向かい、その後Aと買い物を楽しんだ。
都心までの道程では踏切を一度渡ってから、線路沿いを走っていくという感じだ。
通いなれた道であるためカーナビを使うことはなかった。

しかし、Aが妙に緊張というか不安を感じているのが分かった。
私が慣れない車(私の車は普通車、Bのは軽というのもあった)を運転してい訳だし、そもそも私の運転がDD(DethDrive)と言われるほど、お世辞にも上手とは言えないのもあるのだろうと思ってた。

買い物が一通り終わったAと私は、Bの迎えがAM2:00ということもあり、一旦帰路についた。
この時もAから緊張が感じ取れたので、和ませようと夏の定番怪談話をした矢先だった。

今まで沈黙していたカーナビが「700m先目的地です」と言ったのだ。
その前の怪談話もあり、Aと私はかなりビビッて顔を見合わせた。
だが何より驚いたのは、700m先は踏切の真上だった。
カーナビの画面も目的地が踏切になっている。

私の知る限り、それまでカーナビにはAもBも触れていない。
お互いカーナビの調子が悪かったということにし、カーナビの目的地を削除した。

どちらにせよ踏切は渡らなければ帰れないので渡ったのだが、渡り切った後でカーナビが道案内を始めた。
Aと私は無言で見合わせ、もう一度カーナビの画面を確認。
目的地は踏切。
しかもこの先にあるところだ。

最早、調子が悪いなんて事ではない。
幽霊かそういうものだと感じた。

とりあえず無視することにして、車を走らせた。
その間、踏切を目的地にしてカーナビの案内が続いた。
初めの数回は目的地の削除をしていたが、効果がなかったのであきらめた。

通り過ぎる度に、その先にあるものを目的地にした道案内が続くので、Aと私は恐怖とパニックで半泣きだった。
通り過ぎる踏切がなくなったところで、ラジオから感情のない女性の声で「おろしてよ」と声が聞こえてきた。

私は「ギャッ」とうめいてしまった。
Aはうつむいて無言だった。
ラジオからは「早く戻って」と声が続いた。。。
さらに怒った感じで「早く。。。」と聞こえてきた辺りで、Aが堰を切ったようにキレてラジオに罵声を浴びせだした。

「ふざけるな!!」
「昼間からまとわりついてんじゃねーよ!!」
「キレたいのこっちだ!!」
「お前なんざ消えちまえ!!」
「失せろ!!」

そんなことを矢継ぎ早に言いながら、ラジオをガンガン殴ってた。

運転しながらキレてるAの横顔を見たら、涙流しながら鬼のような形相してた。
数分後、またAは無言になったというか眠ってた。

いつの間にかカーナビの目的地は消えており、ラジオからも声が聞こえなくなっていた。
家に着いたところで、Aを起こした。

「昼間からまとわりついてた」ってところが気になって、どういうことか聞いたが「何のことだ?」返ってきた。

そもそも、最初の「おろしてよ」辺りで意識がなかったらしい。
キレてたあんたはなんなんだよ?とか、昼間からってなんだよ?とか、いろいろ疑問が残ったが大事に至らなくて良かったということで、めでたしめでたしとなった。
それ以来、Aと私はBの車に乗らないことにした。

Bのお迎えに関してだが、何故か私の車のバッテリー上がりが直っていたので、私の車で行きました。
私の車からは怪奇現象は起きなかったし、事故を起こしそうになるとかもなかった。

Bには「俺の車で充電したのかよ!?」と怒られたが、とりあえずそういう事にしておいた。
怪奇現象については伏せてカーナビ故障してるぞと言うと、故障も何もカーナビ使ってないから線を切ってあると返ってきた。

最早、「そうか。。。」としか言えなかった。
ちなみにAがキレるところを見たのは、後にも先にもあれが初めてです。
カーナビやラジオの件も怖かったけど、あの時のAの顔は恐さと意外さで今でも頭に焼き付いている。

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