全部台無しな話

北海道の流氷の間に挟まれて動けなくなった、ゴマフアザラシの赤ちゃんがいた。
その親アザラシは、赤ちゃんを目の前に何もすることができない。
さびしい声で泣くだけ。

地元の漁師の間で「可愛そうだ、助けてやるか。でも危険だから近づけない」という話をしていたら、いつのまにか親アザラシはいなくなった。

「それなら赤ちゃんの方も死んだんだろう・・・」と噂をしていたら、その話が某国際的な動物愛護団体に伝わる。

その動物愛護団体は、危険をかえりみず氷河の中へ入って行き、親アザラシと赤ちゃんアザラシを発見する。
そして救助。

しかし、親アザラシは衰弱が激しく、涙を流しながら赤ちゃんを見ながら息を引き取る。
赤ちゃんアザラシの方は衰弱が激しかったものの、点滴や投薬、ありとあらゆる手を施され、なんとか一命を取り留める。

赤ちゃんアザラシは元気になったが、急に自然に帰す事はできない。
自ら餌を取るように訓練し、体力をつけて自然に帰してあげなければと、動物愛護団体は1年の歳月をかけ、赤ちゃんアザラシを育てる。

この時点で、赤ちゃんアザラシは『ゴマちゃん』と呼ばれ、お母さん代わりのスタッフ、幸恵さんに大切に育てられる。

幸恵さんはかなり美しい方で、ゴマちゃんの育児日記などを執筆していた。
自然がどれだけ素晴らしく大切か、切々とした思いが日記に書かれていた。

ゴマちゃんも健康になり、別れはつらいが幸恵さんと別れる日がやってきた。

地元の第一発見者の漁師、又その仲間、役場の人々、そしてその人達の家族達、近所の幼稚園児、隣接する自治体の小学生、中学生達がゴマちゃんの旅立ちを見守る事になった。
新聞社やテレビ局も取材にやってきて、とにかくすごい人出で、幸恵さんもうれしいやら悲しいやら、涙ぐみながらゴマちゃんを撫でる。

ゴマちゃんと幸恵さん、そして大勢のスタッフや見物人を乗せ、出航するフェリー。
沖合いにある氷河に近づく。
ゴマちゃんと幸恵さんとスタッフは氷河に乗り移る。

ゴマちゃんを足元において、いとおしく撫でる幸恵さん・・・。
別れを惜しむように幸恵さんがゴマちゃんを見つめていると、沖合いで魚が跳ねた。

その音に反応したのか、ゴマちゃんは海に向かって腹ばいで歩き出す。
そして海へ。

ああ・・・帰って行くんだねと見つめていると、ゴマちゃんが名残惜しそうに振り返ったような気がした瞬間、ゴマちゃんは海中から現れたシャチに一口で食べられてしまった。

それから二度とゴマちゃんについて報道される事は無かった。

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