深夜の勧誘

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

新入社員のNさんは、就職と同時にアパートを借りて、念願の一人暮らしを始めた。

チョッと古めのアパートだが、風呂とトイレは別になっており、6畳くらいの部屋だし、駅から少し遠い事を除けばまあまあの物件だった。

それから一か月ほど経った日・・・。

日曜の昼ごろ、ドアをコンコンと叩く音がする。

「なんだろ?」

Nさんがドアを開けると郵便局の配達員が立っていた。

配達員:「いらっしゃったんですか?すいません、インターホン鳴らしたんですけど」

インターホンなど鳴らなかったので、電池切れかな?と思って電池を入れ替えてみた。
で、試しに玄関からインターホンを押してみた。

部屋の中ではチャイムは鳴らない・・・。

「くそ、壊れてやがる」

Nさんは管理会社へ連絡しようと思ったが、ついつい忘れてしまって、そのままになっていた。

インターホンが鳴らないという事の不便さを思い知ったのに時間は掛からなかった。
管理会社へ連絡すると、有料での修理になると言われたのでムカついて放っておいたのだ。

また次の日曜日にドアがノックされるので、開けてみると、新聞の勧誘だった。
かなりしつこい男で、追い出すのに相当疲れた。

インターホンなら相手と対面せずに、追い払う事が出来る・・・。
しかし郵便とかピザの出前とかと、不要な相手とを区別するにはインターホンが使えない以上、覗き窓で見るしかない・・・。
ただし玄関のこちら側に居て、覗き窓から見ている事に気付かれるのは嫌なので、自然とNさんは忍び足で玄関へ向かう様になった。
そして”招かれざる客”に対しては、そっと居留守を使うようになった。

しばらく経ったある夜の事だった・・・。

トイレに行こうとしたNさんは、トイレのドアを開けようとしてふと気が付いた。
ドアの外で靴音がするのだ。

覗き窓で外を見ると、男が歩いてくる。
男はNさんの部屋の前へ来るとインターホンを押した。
男は宅急便の制服を着ていないし、荷物を持っている様子も無い・・・。

「こんな夜に面倒な勧誘などお断りだよ」

息を殺して見ていると、男は2度3度とインターホンを押していた。

「早く帰れよ」

男は、インターホンを押すのを止めたと思ったらポケットから何かを取り出し、カギ穴へ差し込んだ。

「え?え?」

Nさんは、瞬時には目の前の出来事が理解出来なかった・・・見知らぬ男はカギ穴に何かを差し込んで、カチャカチャとやっているのだ。

状況に気が付いたのは、目の前でカギがターンしようと動き出したのを見たときだった。
ゆっくりとターンしている。
ハッとして手を伸ばし、まわり始めたカギをカチンと元に戻した。

慌てて覗き穴を見ると、男が走り去って行くのが見えた・・・。

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