昔、ある山奥に集落があった。
土地はあまりよくなく、なかなか農作物が育たない、木を切ったり、籠をあんだり、山菜なんかを売って村人は生計をたてていた。
勿論たいした稼ぎにはならず、おかげでとても貧しかった。
昔にありがちで「貧乏子沢山」な家庭が多い村は町に出稼ぎに行く人が多かった。
しかし、田舎者と足元みられて、安い賃金で重労働。
今でいう「イジメ」もハンパなかった。
町に出た村人は互いに励ましながら、必死に家族の為と働いた。
そんな中にAという村人がいた。
美人な嫁、子供は周りに比べたら少ないが、それでも7人はいた。
美人な嫁はその地域では「神様」と呼ばれる家系で有名で、代々「神様」を奉り、神託を受けたり、お祓いしたり、もっとも、1番の仕事は祈祷と薬草で病を治したり、いわゆるシャーマンの家系だったらしく医者のいない村では頼りにされていたが、町では畏怖(いふ)の対象だった。
ある日、Aが働いていたところで不幸が続いた。
怪我、病気、死亡事故。
作業の一人が「Aの仕業だ、呪いだ!」と言いふらした。
全く身に覚えもなく、ただの言い掛かりである。
そうなると「魔女裁判」である。
Aは捕われ、拷問を受けた。
勿論、「やってない」は受け入れられない。
彼等が欲しい言葉はただ一つ。
「私がやりました」
それを言うまでは解放なんかありえない。
ありとあらゆる拷問。
それでも口を割らない。
彼等は村までいき、妻と子供達を連れて来た。
妻を目の前で犯され、まだ乳飲み子は目の前で八つ裂きにされ殺され、他の子供も腕を落とされ。
目を潰され、脚を折られ、耳を削がれ、背中を焼かれ、頭皮を剥がされた。
彼は自白した。
せざるをえなかった・・・。
同じ村の仲間も言われもない拷問をされたりした。
そしてA一家は処刑される事に決まった。
あまりの酷さに出稼ぎに来ていた仲間は彼等一家をこっそり逃がした。
村に帰った彼等は事を話し、村人に逃げるように言った。
しかし以前から迫害を受けていた村人は逃げずに戦うと言いました。
女子供は逃がし、男達は戦うと。
程なく、奴らが攻めてきた。
村は焼かれ、男達は皆殺し、みせめに、亡きがらは木に吊されたり。
槍等に突き刺されたまま、串刺し状態にされたり、Aに至っては首を落とされ、村の神様を奉る社に頭を串刺しにして立てられ、胴体には「◯※◯※◯」(狂人の意味、表現がキツイ為自粛)と刻まれていた。
Aの妻は実家に帰り、夫の事、自分がされた事、末の子供の事、他の子供のされた仕打ち、村の惨劇、子供の亡きがらを抱いて訴えた。
怨んでも怨み足りない。
憎い、憎いと。
生き残った子供達も、もはや生きていく事が困難な状態だった。
家長である老婆は村に行き、惨状を目にした。
荒らされた社を詣で、神の怒りを感じた。
老婆はAの頭を抱いて戻り、孫であるAの妻に仇を打つ覚悟を聞いた。
何を犠牲にしても、仇を討ちたいか聞いた。
妻は命を代償にしても、と・・・。
そして老婆は秘術を授けた。
数カ月後、町では。
流行り病、奇妙な火災、事故ありとあらゆる禍がおきた・・・。
町は全滅した。
数十年後。
町があった場所に開発計画が持ち上がった。
廃屋を壊し、整備が始まった。
泊まり込みの作業員がおかしな事を言い始めた。
「町から出られない」
休みの日に町を出ようとしても出られない。
それどころか作業中事故が多い。
きっと呪われていると。
他の工員も声が聞こえる、首のない子供がいる。
巨大な犬が追ってくる。
蛇に噛まれて腫れがひかず、膿んできたり、なかには蛇に絞め殺されそうになったり。
死者も出た。
そんな感じで作業は一行に進まない。
大幅に遅れながらもなんとか全て建物を撤去し、整地をし始めた。
そこにあったのだ。
首の骨が。
見つかったのは6つ。
いずれも子供のものだった・・・。
それだけでも不気味なのに、その頭部の骨には蛇が絡み付いており、また、獣の骨と毛がひとふさあった。
そういえば、街中で蛇をよく見かけるし、蛇による事故も多かった。
頭部の骨は綺麗にしてしばらく簡易で安置した。
工員の中に坊主の息子がいたのでお経も一応あげた。
町のはずれの洞穴が発見された。
その洞窟の奥は底深い穴が開いていて、そこには蛇がびっしり・・・。
穴にタイマツの火を入れると一斉に蛇が逃げ出した。
何十、何千、何万・・・。
蛇がいなくなった穴の底には。
頭部の骨を抱いた遺体が・・・。
老婆は孫に言いました。
犬を集めろ。
そして犬と向かい合わせに子供を埋めろ。
首だけ出して。
死んだら両方の首を切り落とし、町のはじ五ヶ所に埋めなさい。
次に町のはずれの洞穴に行き、蛇神さまにその身を捧げなさい。
妻は子供達を殺しました。
犬の頭と共に、月夜の晩に、一心不乱に埋めました。
素手で掘った為に爪は剥がれ、皮は剥け血まみれ・・・。
5つは町を囲むように、指定された場所に、1つは町なかの神社の下に埋めた後、妻は子供達の身体を丁寧に弔い、Aさんの頭を抱きしめて、暗い洞穴に消えて行った。
「狂わすには四辻、殺すには宮の下」
町の周囲に埋めた首は結界、外から内に入れない為ではなく内から外に出さない為に・・・。
神社の下→宮の下。
最後に自らの命を捧げる事で呪詛は完成した。
工事は大幅に遅れながらも完成した。
今は普通に宅地開発され、町が形勢されているそうです。
町の結界は解かれました。
しかし、呪詛が返されたわけではない。
死者に呪詛は返せない。
今も呪詛は不完全ながらいきているらしい。
町でよく蛇を見かける。
犬の事件が多い。
首なし幽霊の目撃情報が多い。
そして、精神を病んでいる人が多い・・・そんな町にはご注意を。
「狂わすには四辻、殺すには宮の下」
町にあった頭部は6つ。
呪いはまだ終わらない・・・。
「狂わすには四辻、殺すには宮の下」
こんな言葉が言い伝えられている処にお住まいではないですか?