金縛りに慣れた頃

カテゴリー「心霊・幽霊」

16歳で初めて金縛りにあってから、転居先で必ず一回遭うようになった。
初回はさすがに恐くて堪らなかった。
が、二回目にかかり、それがとけた時、これは半覚醒状態である、と確信するに至るある理由を体験した。

それからはそれを恐いと思わなくなっていた。
結婚して新居に移り数ヶ月後、深夜にそれは来た。

しかしこれは半覚醒状態であると確信していたため、どこまで意識をハッキリさせられるかをテストする余裕があった。
左側に人の気配がする。
これは寝ている妻のものである。
足下の窓の外から軽い音。
木の葉が風で擦れ合う音だ。

などと分析している自分は、運動中枢を司る脳の一部が睡眠状態、意識、精神を司る部分が覚醒状態である、と認識した。
だが、からだはいっこうに動かない。
まいったな、と思いながら指先に神経を集中したりするが、やはり無理。

いつまで続くのかと考えた次の瞬間、「やめてやれよ」あまりにも驚いたためか、違う理由か、飛び上がるように上半身が起きた。

しかし確かに聞こえた。
腰辺りから腕一本分、60cmくらい右。
そして上に1mほどの所からの男の声。
部屋には当然、夫婦2人だけ。

聞き間違うような奇妙な音はしていない。
その後、転居した家でまた一度遭ったが、前回と違いただただ目をつぶり、あっち行け、助けて、と心の中で叫んでいた。

この10年ほどは、それとは縁遠くなっている。
もういらない。

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