俺がまだ小学校の時、聞いた話。
俺の叔父は刑事で、捜査一課だか二課で働いているのだが、その叔父が風邪を引いてしまい、独身者には病気は辛かろう、と、両親が心配して、叔父の実家でもある俺の家に泊まらせていた。
叔父は外見はヤクザにしか見えないぐらい怖い人相なのだが、その叔父が、かわいいドテラを着て、咳き込みながら茶をすすっている姿はとても珍妙で、いつもは近寄りがたいのだが、その日は叔父と一緒にコタツに入って、俺の両親と一緒に、珍しく話しこんでいた。
「叔父さんもねー。いつもは風邪なんて気合で治すんだけどねー。今度のはちとヤバイ気配でね。ちょうど、君のお父さんから電話もあったんで、お世話になる事にしたよ。叔父さんが働いてるトコでは、もう3、4人も倒れてね。こりゃー本当にヤバイわな。君、怖い話って大丈夫?聞いてみたい?」
「叔父さんはね、夜中に張り込みやってて、そのせいで風邪ひいたんだ。同じ職場の人と二人でね。カイロも張ってたし、暖かいコーヒーも飲んでたんだけどね。」
「慣れた事なのに、風邪ひいたよ。一緒にいたヤツも。近くで待機してた奴らもね。その時、叔父さんはここから遠くの公園にいたんだけどね。知ってる?そこの公園にはこんな怖い話があってね・・・。」
叔父さんは話を続ける。
「そこの公園にはホームレス・・・・よく昼間に汚い格好で歩いてる人達だよ・・・・が殺されたっていう噂があってね。会社で怒られて、イライラしてる大人達が、そのホームレスを殴って、殺してしまった。遺体は放置され、しばらくして発見された。でもね、近所の人たちは喜んだよ。そのホームレスは子供が嫌いで、よく子供を虐めたり、女の子にイタヅラするっていわれてた、評判の悪い人だった。でもね、しばらくして、その男の幽霊が公園に現れて、子供を襲うという話が出た。」
叔父さんの話に俺は引き込まれていった。
「夜に子供を連れた家族がその公園を通りかかり、ふと子供が見当たらないと思ったら、遠くに自分の子供が倒れてる。片方の目をくりぬかれて・・・ね。子供が言うには、いきなり変な男が現れて、スプーンを目に差し込んできた、と言う。襲われた子供はみんな同じ事を言った。そして、家族はなぜか被害届けを出さない。皆、共通でね。なぜだかわからん。そんな大事件の被害届けを出そうともしない。理由は・・・・わからん。とりあえず夜の公園には、絶対近づかない事だ、な。」
俺は話を聞き終えると、さすがに「それ嘘でしょ」と笑った。
なんで幽霊になってまで子供襲うの?なんで自分を殺した人を呪わないの?
なんで幽霊なのにスプーンなんて使うの?などといった疑問を言うと、叔父はヘラヘラ笑った。
「あ~ウソウソ。やっぱ引っかからないか~。君も大人になったな~。」
俺は少し頭にきて、隣の子供部屋に引っ込んで、布団に寝込んだ。
すると、隣から叔父の声が聞こえてきて、どうやら俺の親父と話しているようだった。
「いや、悪い。子供にまで変な話聞かせてしまって。自分でも下手な話だったな。でもな、兄貴、ホームレスが殺されて幽霊になったって話でもなきゃ、事件の辻褄が合わんのだ。どうして子供の目をえぐる?どうやって現れて、どうやって消える?」
「ただな、あの公園は異常だ。俺は風邪で済んだが、もうあの公園は勘弁だな。俺達が張り込み時に複数で行動するのは、人間相手だけとも限らんからだぜ。」
今でも半信半疑だが、警察でも時より不可解な事件は起こるようです。