知らない奴

カテゴリー「怪奇スポット」

高校時代の同級生で比較的仲のいい俺、B、Cは、
この夏、久しぶりに沖縄へ旅行する事になった。
到着は夜の7時。
俺達はは予約していたペンションに荷物を置くと、早速浜辺へ出かけた。
単純に海で泳ぐ事や、ナンパが目的ではない。
実は数日前、Cの兄が友人数人とここを訪れた時、妙な洞窟を見つけたのだ。
浜辺の隣にある森を抜けなければ発見できないが、その森を抜ければすぐそこにある。

Cの兄は友人たちと遊んでいるうち、その洞窟を見つけた。
不審に思ったので地元の住人に訊ねると、どうやらかなり怪しい洞窟で、
誰も近づかないそうだ。
その洞窟に今から行くのだ。
それも夜に。
俺達は洞窟に着いてまず驚いた。
落書きや悪戯が全く無い。
こういう曰くつきの洞窟などには何かしら悪ガキ達が何かしていくものだ。

覚悟を決め、中に入っていった。
ヒタヒタヒタ・・・と進むうち、Bが口を開いた。

「おい、無意味じゃないか・・・?」

怖気づいたのかと、この企画を立てたCは言った。

「こんな所に来たって無意味だろ。
霊がいて、何になる?何にもならねぇじゃねえか」

Bが眉間に皺をよせて言った。
相当苛立っている。

「こいつで撮るんだよ。
雑誌でそういう企画があってさ、心霊写真1枚につき3千円だと」

Cはそう言うと、ポラロイドカメラを片手に笑って見せた。

「畜生、結局金儲けのために来たんじゃねえか」

Bは渋々着いて行った。
俺も後に続く。

もう随分進んだだろうか、帰り道には地面に蛍光テープを貼って来たが、流石に怖い。
Cは洞窟の隅で小便をしている。
俺達3人は地面に座り、だるそうにCを待った。
Dが沈黙を破った。

「見知らぬ人に急に写真を撮られたらお前らも怒るよな?」

Dが何を言いたいのか知らないが、俺とBは素直に「ああ」と応えた。

「そんなことされたら幽霊さん達も怒るんじゃないか?元は人間だったんだし」

何を言いたいのか解った。
写真を撮れば幽霊を怒らすことになるんじゃないかと。
だが俺は既に、ここに足を踏み入れた時から怒っていると思える。

「逆鱗に触れたくないのは分かるぜ。
でもCはもうその気だろ」

さっきの件以来、Bはどうやらその気らしい。

「Aはどうなんだよ」

Bが聞いてきた。
Dも横目でこっちを見ている。

「俺は・・・、別にいいぜ。
皆で行けば怖くないしな(笑)」

そんな事を話す内に、Cが戻って来た。
時計の針は7時半を指しているが、もう数時間歩いたような気がする。
流石に喉も渇いてきた。
目的の写真も1枚も撮れていない状況。

「おい、何かやばくないか・・・」

Bが静かに言った。
Cは「またかよ」と言う。

「何かその先、霊が手招きしてるぞ。
いっぱい・・・」

CはBの指す方向をライトで照らす。

「何にもねえよ。先、進もうぜ」
「駄目だ!!」Bが怒鳴った。
さっきまではいく気になり始めてたのに。

「何だよ!じゃあお前だけ帰ればいいだろが。
この先に何がいるってんだ」

Cも怒鳴る。
段々険悪なムードになってきた。

「じゃあお先に帰らせてもらうぜ。
どうなっても知らないからな」

俺もBの会話を聞いているうちに段々怖くなってきた。
誰が手招きしているんだ?
「お、俺も帰らせてもらうよ。
さきにペンションで待ってるよ」

Cは「腰抜け達め」と捨てゼリフを吐き、Dと共に奥へと消えていった。

「さぁ、行くぞ!」Bはそう言うと、
俺の手を引っ張りながら猛ダッシュでもと来た道を引き返した。
俺は何度か待てよと言ったが、Bは聞く耳持たず、と言った感じで出口へ向かった。
しばらく、二人とも森の隣の浜辺で一休みしていた。

俺は近くの自動販売機で買ったジュースで喉を潤し、「あいつら大丈夫かな」と言った。
Bは何故か俺を睨んでいる。

「多分助からねえよ。絶対にな」

Bの発言に驚いたが、俺はすぐさま言った。

「何で分かるよ?あいつらだっていつまでも馬鹿じゃないんだし、すぐ戻ってくるさ」
「実は、誰かが手招きしてるってのは嘘だ。
誰も手招きなんかしてなかったよ」

俺は「なんだよ、嘘ついてたのか」と笑い顔で言った。

「おいA、よく考えてみろ」

「Dって誰だ?」

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